読者メッセージへの返答です。こんなメッセージをもらいました。

 

いつもぜんせー様のブログを見させていただいております。
僕は今、15歳の**高校(**県で偏差値**後半)に通っていて将来アヴェンタドールを購入するのが夢です。そのためにはやっぱり起業するのが近道だとよくネットで書かれていますが、起業したとしても失敗して借金地獄になって、ランボルギーニどころか軽自動車すら買えなくなってしまい人生おわるのではないかと不安です。ぜんせー様が起業して大変だったところや、アドバイスがあれば返信していただけませんか。よろしくおねがいします!
追伸:息子さんと娘さんとてもかわいいですね!

 

実は他の読者さんから普段もぱらぱらメッセージを頂くのですが、ほとんどシカトしてしまっています。さーせん。なんせ返答したらしたでそのまま音信不通になるケースがほとんどですからのぅ。

さて、彼のメッセージ。

彼、頭良さそうですね。偏差値高いし。その彼は

起業したとしても失敗して借金地獄になって、ランボルギーニどころか軽自動車すら買えなくなってしまい人生おわるのではないかと不安です。

こう言っています。センス良いですね。闇雲にどうやって起業すればいいかってメッセージばかりでうんざりでしたが、彼は高校生であってもリスクをしっかり見ている気がします。彼の言う通り、クルマごときで起業を目指すべきではありません。それに起業はなるべくならしないほうが良いとさえ思います。起業イコール金持ちではありません。起業は責任だけがどんどん積み重なり、お金が入ってくる確約など微塵もありません。わざわざ一度の人生に、拭い去ることのできない不安を抱える必要があるのか、一度問うてみるべきでしょう。

ボクが起業をした時、それは必要に駆られてでした。仲間を引き連れて移籍した会社が突然倒産したのです。明日からどう生きていけばよいか分からない状況に一夜にして陥りました。転職すればよかったのでしょうが、ボクを信じてついてきてくれた仲間達と縁を切る気はありません。こうして何の事業アイデアも持たないまま、ボクら一行は5千円のデスクを買い集め、今にも朽ち果てそうな50平米のビルを借りました。信用もなければ保証金も用意できないので、ビルオーナーにプレゼン資料を作りました。ボクらはデカくなる!だからオフィス安く貸して!って。なかなか言ってみるもんで、オーナーは快く応じてくれました。家賃は15万円でした。今でも感謝しています。

当然のようにそれから地獄の日々が始まります。会社員時代に残しておいたお金は一瞬で喪失しました。設備費、賃料、そしてもっとも重要で、最もコストがかかる人件費です。人を雇うということは並大抵の事ではありません。自分のカネで起業しようなんて考え自体が間違っていたのです。スグにボクは一文無しになりました。信用がないので銀行からは借りれませんでした。親から借り、先輩から借り、それでも一瞬でカネは底を尽きました。節約の日々が続きます。電車も乗らず、タクシーも使わず、長い距離を歩いて帰りました。子供もいるのに、これから先どうしようかってずっと考えていました。

しかし一緒に働く仲間達は、儲かるまで給料はいらないと言ってくれました。そして妻マッキーが結婚生活資金として残しておいた500万をボクの会社に突っ込みました。更に叔父が数百万を振り込んでくれ誰よりも大きな金額を投げてくれたのは、ナイト業界の先輩でした。ボクの話を聞いたその日に融資を実行してくれました。今でもその先輩とはよく顔を合わせています。

幸いな事に、ボクら一行はコンピューターエンジニアとWEBデザイナーの集合体でした。つまり、無から有を作り出せる集団であったということです。昨日まで会社員だったボクらには人脈もカネも何もありません。ボクらに出来ることは作ることそれだけ。ボクは来る日も来る日もプログラムコードを書きました。お金がなくて徒歩で帰る時間ももくもくと頭の中でソフトウェア設計を繰り返しました。夢でもコードを書き続けました。そこに仲間のWEBデザイナーが視覚効果を与えていきます。ボクらが作ったのは特定業種に特化したWEBシステムでした。完成まで半年かかりました。借金は膨れ上がっていました。

ソフトウェアが完成した。次にやる事はそれを売る事です。しかしボクらに何かを売る力はありません。何から何まで自分達で行いました。しかし売れませんでした。もう後はありません。ボクらを信じてカネを投げてくれた人々の想いには答えられない。死を身近に感じたのはこの時です。大変どころか、生きる気力さえ失おうとしてました。

ところがある日、システムを試してみたいというお客さんが現れました。お試しなので無料です。どうせ契約にはつながらないだろう。半ばあきらめです。しかし数日経過して、そのお客さんが正式導入を決定しました。口座に30万円が振り込まれました。仲間達全員でその残高を眺めました。乾いた砂漠を永遠にさまよった末見つけたオアシス。きっとそういう気持ちだったと思います。

たくさんの苦労がありました。でも客が客を呼び、ある時を境に爆発的に顧客が増えました。いつしかボクらの口座には見た事もない金額が集まっていました。増え続ける顧客の対応に昼夜問わず働き続けました。ソフトウェアの提供ですからサポートも自分達で行わなければなりません。深夜も鳴り続ける電話。一度だけ倒れたこんだ記憶があります。寝付こうにも電話がなって寝付けないのです。それが連日続くのです。

それからも雇われていれば決して味わう事のない苦痛をたくさん味わいました。自分がいくら持っているのか、いくら売り上げているのか、そういうのも分からなくなっていました。とにかく仕事をする。とにかくプログラムを書く。それだけの日々でした。ある時から妻マッキーが経理を見るようになりました。とても楽になりました。プログラム開発に加え、1個1個全部自分で振り込み処理をやっていたからです。マッキーから報告を受けるにつれ、もっと良いオフィスに、もっと人を雇おうと思いました。業務量が創業メンバーのキャパシティをとっくに超えていたんですね。

オフィスを新しくし、人も雇いました。しかし今度は人材マネージメント力が求められるようになりました。人を管理することはなによりも労力がかかります。何度も苦境を味わいました。それでも手を止めず、新しいビジネスを始めました。幾度かオフィスを引っ越し、人員も増え今に至ります。

こうして読者からメッセージをもらい、改めて振り返ってみると、起業してよかったとはっきり言えるのか分かりません。もう一度あの苦しみを味わえと言われたら逃げ出しそうです。

でも、やっぱり起業してよかったです。

それは仲間達と同じ目標に向かって進んでいける人生を歩めるからであり、好きなクルマに乗ったり、アヴェンタドールに乗れた事はこれっぽっちも理由にないです。もちろんアヴェンタドールを買った時は嬉しかったですが、今はそれを手放し、もう欲しいとさえ思いません。所詮は一つの工業品。起業は別の次元にあります。起業は人生そのものであり、人生の質でもあります。仲間がいるから会社が在って、その会社に社員も、家族もボクも養われています。会社を大きくすることはボクに関わるすべての人の生活が向上する。今はそれが目標で、スーパーカーのために何かをしようなんて気にはならなくなりました。

でも、若いあなたがスーパーカーを買うために起業を目指す。それはとても正しい事だと思います。だってスーパーカーは一度所有してみないと諦めきれないでしょうから。是非突き進んで欲しいと思います。日本は起業リスクが高いわりに起業家の地位が低いです。しかし起業家がいなければ国が成り立ちません。自分を奮い立たせることができるなら、キッカケは何でも良いのです。

もしボクが人の人生にアドバイスできるとすれば、変な気は起こさず、しっかり勉強して、会社員になって社会構造を学び、お金の回り方を知りましょう。起業は信用の上に成り立ちます。会社員時代でその信用は構築されます。もし起業しようとするときに、誰もあなたについてこないなら、おそらくその起業は失敗するでしょう。人を味方にする能力は偏差値ではなく、人生の経験値に依存します。学生起業家のほとんどが失敗もしくはベンチャーキャピタルの奴隷になるのはそういうことです。社会は思った以上に泥臭い。だからこそキラキラに目を奪われず、泥まみれになりましょう。そういう人間が最終的には勝ちます。

サンフランシスコ出張で出会った、巨大投資会社のマネージャーとの対談記事も参考にして欲しいです。彼もこう言っています。

「多種多様な働き方があるとはいえ、自分の時間を持ち、まとまったお金を作れるのは40代を迎えてからになる。それまでは社会に属し、なるべく経営陣の近くで考え方を学んだほうがよい。」
 
ミート君とゆくサンフランシスコの旅:人生を変える決断を

若き力。応援しています。しかしボクのような中卒の体験談は参考に留めておくべきです。何故ならあなたは頭が良い。ボクとは生い立ちが違いすぎる。これから人に恵まれるチャンスもたくさんあるでしょう。もっと効率よく立ち回れるはず。是非自信を持って挑戦して欲しいです。
 

 

>追伸:息子さんと娘さんとてもかわいいですね!

オレ似!