旧車メルセデスはただ保管するだけでも楽しめる。その方法は
クラシックメルセデス。126型 560SEC AMGを長期保管しています。ここ最近は2週間に一回はエンジンを回すようにしています。放置しすぎるとオイルが下がってしまってタペット音の原因に。
まずはカバーを外します。前から外して、後ろにくるくる巻いていきます。傷にならないようゆっくりと巻き上げます。
ボンネットを開けます。560SECはグリルの両横に解錠用のレバーがありますので両手を広げてレバーを同時に押す必要があります。コストかかってますよね。
ボンネットを開けたらバッテリーを通電させます。
そしてドアにキーを挿して解錠します。キーレスというようなリッチなものはついていません。キーシリンダーを傷つけないようにゆっくりと正確に差し込みます。解錠されるとポンプによってすべてのロックが解除されます。「がこんがこん」と時間差でロックが外れていく音に耳を澄まし、異常を感じないか確かめます。クラシックメルセデスにコンピューターで異常を検知するような未来的な機能はついていません。感覚に頼る必要があります。
ゆっくりと乗り込みます。当時最高峰のレカロCSEに巻かれたジャーマンレザーを傷つけないように座ります。金具がついたジーパンは禁止です。そうですね、触れるのに最も適した格好は”パジャマ”でしょうか。そして室内灯が点灯しているか。レカロの操作スイッチに球切れはないかを確認し、しばし独特のレザーの香りを楽しみます。
エンジン点火です。ここでもキーシリンダーを傷つけないよう、丁寧に扱います。キーシリンダーの故障は致命的なので避けなければなりません。右に一旦回し、すべてのランプの点灯を確認してから更に右へ回して点火します。
6リッターチューンドエンジンが目を覚まします。瞬間的に回転が上がり、マフラーから太い排気音が響きます。キーをひねって一瞬で目覚めるこの感覚。80年代バブル期に作られた暴力的なこのクルマの本領を感じ取れる一瞬を楽しみましょう。
今度はクルマから降りて、エンジンの状態をチェックしにいきます。途中、贅沢に張り巡らされたウッドパネルを鑑賞しましょう。現代車と違って、本物の木を加工して作られたウッドパネルです。当時の職人の技がつまった逸品です。現在でもリペアはできますが、当時のクオリティーに戻すことは困難で、ロストテクノロジー化した一つのです。さぁこの不規則な木目が醸し出す高級感を楽しみつつ、クリア表面に割れがないか一通り点検しましょう。旧車メルセデスは機関系も大事ですが、もっとも注意すべきは内装の劣化です。内装パーツはほとんど手にいれることができません。AMGの特殊モデルは特にです。入念なチェックを忘れずに行います。
エンジンのフィーリングをチェックしましょう。ぎっしりつまったメカメカしいエンジンルーム。タペット音はないか。大丈夫そうです。アイドリングが落ち着くと共に、ノイズは消え、あとは低く太い排気音だけがビル内に響きます。異常ナシ。M119 6リッターAMGチューンドエンジン。あなた素晴らしい。
しばらく暖気してから、しずかにスペースから出します。エンジンは十分に暖まったようです。すこしアクセルを踏んで回転をあげながら走行チェックをします。ハンドルは切りすぎず、ブレーキのフィーリングをチェック。どこにも異常はないようです。アクセルと直結されたかのようなエンジンフィーリングです。踏み込んだ分加速します。ディーゼルとは違った、静かだけど強い力を感じます。「これが33年前のクルマだなんて誰が一体信じるってんだ」と、隣の何も知らない娘に語りかけます。「パパとは、男とは。なんてバカな生き物だろう。でも何かに執着することはそんなに悪いことではないのかもしれない」という事に娘が成人してから気づいてくれればいいなと。
残念ながらすべてパーフェクトとは言えません。特にタイヤの劣化が激しいです。空調の効いたビル地下で保管していてもタイヤの劣化は避けられません。タイヤ内部の油分が染み出て、それが汚れとなって表面に固着し、乾燥し、ひび割れていきます。やはりクラシックカーといえども定期的な洗車をしてタイヤワックスで保護しないと美観を維持することは難しいです。
そしてここ。リアフェンダー部分の塗装の盛り上がりです。ひどくなってきています。もうこれは鈑金屋さんの力を借りるしかないでしょう。サビでしょうか。でも洗ってないから水分はないはず。と思いたいところですが、サビはそう甘いものではないようです。わずかでもサビがあれば例え水分がなくてもどんどん進行していきます。水を一切嫌っても、大気には水分が含まれているでしょうし、サビるリスクからは逃れるには、適度に洗車し、適度に走らせて風をクルマ全体に通すことでしょうか。
さて、今回の定期点検も終了です。旧車の保管で最も重要なのは紫外線を完全に遮断するということです。だからここまで放置していても劣化は最小限に抑えられていると言えましょう。
現代的なVに乗り換えて場を去ります。このプロセスを2週間に一回くらいの頻度でやっています。クラシックカーというのは、例え乗り回さなくても、所有しているだけで楽しめるということを分かって頂けたら嬉しいです。劣化に気を病むところもありますが、それを差し引いても、この重厚な塊感は満足度が高いです。旧車AMG、永遠に。
SNSに脳が侵されてるんでブログにいいねが無いことが歯痒く思います
ブログの文章を読んでいる間に、知らぬ間に脳内でAMGチューンドエンジン(地下駐車場)のドロドロ音が鳴っていました。
横から見たプロポーションもたまりませんね!