空港内の隔離室。床に就いたのは朝5時を過ぎていた。もう何日寝ていないのだろう。この十時間、自分が経験したことのないことばかりが起こった。脳が覚醒していて中々眠りにつけない。しかし、仮に今寝ても3時間後には隔離室を出て、病院に移動しなければならない。病院に入ればしばらく検査が続くだろう。ゆっくり寝れるまであとどのくらいの時間がかかるのか。もはや体は限界だ。とにかく人として最低限疲れが取れる環境が欲しい。これがおじいちゃんやおばあちゃん、体の弱い人だったらどうなるのだろう。コロナ以前にこの環境によって体がおかしくなってしまうそうだ。

1時間。眠りにつけたと言えるのはそのくらいだった。朝9時。隔離室の電気が強制的に点けられ、病院への移動を促される。多忙な空港スタッフは極めて事務的だ。私の体調を気遣う余裕はない。しかしたった1時間でも仮眠できたのは良かった。頭はスッキリしている。気分も悪くない。しかし喉は痛い。でもこれは空気の乾燥だ。何度でも言いたい。空気が乾きすぎていて、あっというまに口の中の水分がなくなる。

3名の職員に誘導され、空港内を移動した。おそらく一般には通らないルートである。コロナ陽性者である私は一般の人と距離を置かねばならない。裏口を出ると大型のバンが止まっていた。丸々1台、私を輸送するためだけに用意されたことに驚いた。

荷物を積む。職員がやろうとしていたが、重そうだったの私がやった。単に陽性者というだけであって、病人ではないのだ。自分の事は自分でやる。

 

さぁ出発だ。都内にある感染症指定病院へ向かう。

 

天気がよかった。ようやく日本の景色を見ることができた。帰ってきたとここで初めて実感した。

 

走ること30分。病院に到着した。看護師が出迎えてくれた。荷物は自分で運ぶといったが、看護師は私が運びますよと言った。なんだかホテルのサービスを受けているようだった。たった一人の陽性者、しかも無症状者に対して専用車両、病院の個室、多くのスタッフ。こんなにも貴重なリソースを割いてよいものなのか。日本。この国は本当にスゴイ。

 

病室に入りました。あぁ・・素晴らしいです。日が差し込む部屋、シャワー室、暖かいベット。必要なものは看護師さんが売店で購入してきてくれます。ご飯は7時、12時、18時。暖かく、栄養管理されたものが提供されます。

 

シャワーは好きな時に、好きなだけ。

高速なWifiも通っています。

 

早速PCをセットアップしました。モニターごと持ち運んでいたのです。この環境だと、もはや自宅と変わりないレベルになりました。

 

夕方。病室から外を眺めます。良い景色です。空気が澄んでいます。しかし部屋自体が陰圧(ウイルスが拡散しないように)されているため開けることはできません。それでも羽田の隔離室からすると100倍良いです。

 

とてもとても、良い環境です。高速wifiとパソコンセット。この事実。仕事のほとんどをこなすことができ、ネットフリックスで映画・ドラマ、PCゲーム、Youtube。あらゆることが可能です。家族とビデオ通話しながら、ケーニッヒをレストアしているメカ氏にちょっかいを出すことさえも可能です。それでいて、時間になると暖かくておいしいご飯が運ばれてきます。少しでも体調に変化があれば看護師さんが駆けつける。ゴミも、掃除も、私がやることはありません。

こういった状況に何か違和感を感じます。結局、私は何なのか。寝不足は感じますが、いわゆるコロナの症状を感じません。今、仕事に行けと言われれば行けるし、テニスをやれと言われてもできそうです。しかし公衆衛生の名のもとに隔離です。この、無症状者にとってはもはやホテルサービスに近い隔離措置は国費によって賄われているのです。良いのでしょうか、私なんかより、もっとこのサービスが必要な人がいるのではないか。そう思います。