そういえばガレージについて語っていなかった。だいぶ変化があったので記録しておきたい。

どうしようもなく汚い廃工場をガレージとして使っていた。元食品加工場のようで、何をしても取れない油汚れがそこら中に染み付いてた。でもクルマをしまうためだから、中の汚さは特に気にもとめていなかった。でも洗車をしているうちに、なかなか奥深い世界だということに気付いた。そこからはいつものヲタク癖が炸裂して今の通りである。

ガレージをフルリノベして、映像ばえする空間を作り上げた。こだわりのオールホワイトだ。床は強固なエポキシの特注ホワイトで仕上げた。強力なケミカル剤も弾き返し、重量物にも耐える。

出来ることは自分でやった。電気工事、水道工事。

水道管の新設は思い通りこなせるようになった。洗車において水は要。その水を自分の思ったところに出せるという事が更にヲタク心を刺激することになった。

水道を知れば、今度は配管にハマるというのは世の常。オリジナルの純水システムを作りたくて、配管を学び、実際にデザイン・施工をした。

この頃から重機を使い始め、パイプ加工に苦労したが、思い通り操れるようになってきた。もっとも苦労したのは寸法の精度を高めることだった。職人の凄さをここで実感していく。辛かったのは、一般的ではない部材を選んだ事で、管材商社との取引が必要だったことだ。素人の個人などどこもお払い箱で、相手にしてもらえなかった。

息子に配管を良く見せてやった。社会を支えているものが、実はこういうものだということを知って欲しかった。

ステーキには赤ワインだ。配管の次はホースだ。米国のYouTuberが運営しているストアからホースを輸入した。割高だったけど仕方あるまい。しかしそのホースは最初の通水で豪快に漏れた。スイベル部分からの漏れだから補修は不可能だ。彼は素晴らしいホースだと絶賛していたが、私にとって返品のできないただのゴミだった。なんだか虚しかった。ホースの破損にではなくて、YouTuberが絶賛したからと言って鵜呑みにした自分を悔いた。それがホースへのこだわりを駆り立てた。

そこから様々なホースをテストした。自分の手でしっかり品質を見極めようと思った。しかしどれも納得の行くものがなかった。だから作ることにした。オリジナルの高圧ホースだ。アメリカで良質と言われるホースを参考に、よりフレキシブルなホースを設計した。設計と製造は中国のホース専門工場と行った。

より柔らかく、従来通りの耐圧力を持つホースが出来上がった。ホースをいかにしなやかに、捻れなく取り回すことができるか。それがとても重要だ。

ホースはワイヤー・表面素材が一つ違うだけでこれだけ曲げやすさに違いが出る。

ワイヤーが何重構造になっているかも重要な要素だ。多重構造になればなるほど耐圧力は増すが、同時に重く、しなやかさを失い、取り扱いのしずらいホースになる。

こうして完成したものがこれ。自分で作っておきながら、とても良いものだと思う。少なくとも業界で良いと言われている米国製のホースよりよく曲がる。いつか販売できたらなと考えている。でもまだ満足はいっていない。理想の形を追い求めていこうと思う。

しかし低圧用のホースもいる。水道栓と高圧洗浄機を結ぶもの。ここもこだわった。ステンメッシュ製にした。最初は一般的なもので試したが、メッシュの粗さに納得いかず、最終的に国内のホースメーカーにオーダーメイドで作ってもらった。ここのホースメーカーは当初、商社を通せと言われたが、ホースへのこだわりを説いたら、特別にと個人用に作ってくれた。日本企業も米国企業と同様、熱意を評価してくれる。
しなやかに曲がり、目が細かく編み込まれた美しいステンメッシュ。このホースは本当に素晴らしかった。手に持った瞬間震えた。そのくらい出来がよかった。

今度は棚だ。ステンレスシェルフが必要だった。これはツイッターのフォロワーさんが私用に設計してくれたオーダーメイド品だ。板厚が1.5mmあり、曲げ圧力に強い。上に重い重機が乗っても大丈夫だ。角は溶接のサンダー仕上げ。一体感が素晴らしい。

最終的にシステム全体はこのようになった。うまくまとまった。なんてことないように見えるが、実際このレイアウトを組むまでにかなりの労力を割いた。

オリジナルのシステムを組み上げていく中で、最も重要な位置を成すのはなんだろう。それは高圧洗浄機で間違いない。高圧洗浄機にすべてがつながり、そこから加圧水が吐出され、ケミカルが泡状になり、適切に希釈された後、クルマに当てられる。洗車において高圧洗浄機は最も重要な位置にいる。

ケルヒャーや、

マキタ・アイリスオーヤマ。一般的に手に入るものを使っていた。でもずっと満足いかなかった。オリジナルのシステムに、量販店の安価な高圧洗浄機はどうしてもマッチしない。そこに登場したのが、

ドイツブランド・クランツレ洗浄機だった。屈強な作りで、海外のディテイラーでは高い評価を得ている。業界ではNo1的な存在といってもいい。一般的に売られている高圧洗浄機約10倍の価格だ。しかしこのクランツレ洗浄機もそのまま使うにしては分が悪い。移動式のためボディが大型化しているからだ。ガレージで高圧洗浄を使う場合、トロリーは必要ない。できれば据え置き、ウォールマウントが望ましい。

私はこれを分解し、小型化を図った。

出来上がったのがこれだ。これならウォールマウントが可能になる。でもなんだろう。どこか中途半端を感じる。殻を剥いた。ただそれだけの物体。

中途半端がイヤだった。システムの中核を成す高圧洗浄機は完璧なデザインであってほしい。理想の形はあった。でもそれを実現するには構造そのものを変えなければならない。

メーカーへ何度も問い合わせ、理想の形が実現可能かを探った。相手は欧州の機材メーカーだ。大型モーター、ピストン、高圧。ホースとは違う。個人が要望を出して、はいそうですかと物事が進むはずがない。

しかしこのクランツレ洗浄機という高品質でクールなデザインに惚れてしまった以上諦めるわけにもいかない。構造を勉強し、やりとりを繰り返しているうちに、ついに直接会って話すという機会を得た。理想の形が実現できるか分からないが、一歩近づいた事は確かだ。

日本クランツレ大阪を訪問した。ここから私とクランツレ洗浄機の長い戦いが始まっていく。