アンフェアな人生

受験を控えた息子。ここ最近は学校見学が頻繁にある。テニス部に体験入部したり、体験授業を受けたりと、楽しそうだ。

息子がテニス体験をしている間は親にお餅が振る舞われた。おいしい。今日行った学校はテニス強豪校だ。生徒全員が規律だっていてすごく好印象だった。厳しいシツケがなされているんだと思う。ここ最近までは世の中は親のクレームや個人の意思を尊重する傾向が強く、子供にあまり強い規制をかけない流れにある。ゆえに間違った方向に行っても是正力が欠けるケースがある。しかし徐々にこの風潮も見直されていて、しっかり管理する文化が復活している様子だ。緩い校風か、厳しい校風か。ボクは後者を支持する。前者の校風は人生何周も迎えた優秀な子には最適だろう。ボクの息子のように精神年齢が幼く、学習能力に乏しい場合は細部までルール決めされている方が結果的に良い方向に向かうと思うんだ。

テニスが強豪である原因はなんだろうか。先生は「ボールひとつ失くす事は許されない。見つかるまで深夜になろうと部員全員で探す」と言った。感銘を受けた。大人になると時間の無駄だからといってボールひとつに意識を向けない。それが悪いとは思わないが、教育というフェーズでは物を大事にするという意識を培ったほうが良い。1円捨てる者は1円に泣く。ボクはガレージのそこら中に散らばったビスをぽいぽい捨てる。すると必要な時にビスがなくて、ホームセンターに走らなければならない。そういうことだ。

週末はテニスの試合だった。シードなので2回戦目から戦う。勝利を収めたがあまり良い試合とは言えなかった。小学生はミスジャッジが多い。オンザラインは正式にはイン扱いだが、不利な立場だとそれをアウトとジャッジする。子供だから自分が有利なようにジャッジするのは仕方がないと思う。それにセルフジャッジというルールなので抗議しても覆らない。スポーツマンとしても人間としても不正なミスジャッジはやめようと教えているが、結局ミスジャッジの報復戦となった。子供の戦いにスポーツマンシップなんてキレイ事、通用しないんだなと思う。2回戦目は接戦だったが負けた。最後の一球でガットが切れた。

また違う学校の体験会に行った。この学校はスマホでのトラブルは徹底的に学校が介入するというスタンスを取っていた。グループラインなどは強制的に解散させ、トラブルを元から断ち切るという思想のようだ。すごく良いと思った。娘の学校もスマホトラブルに相当手を焼いている。その学校は「スマホは親の領域」というスタンスを取っているので、強制力がなく親の意思を尊重しすぎて解決に至らない。スマホトラブルと一言で言っても事は大きく、警察沙汰になることも多い。学校があらかじめ強力に介入するとルールを宣言してくれたほうがスマホ社会な現代には理にかなった教育方針だと感じた。

そして息子のテニスの練習に駆り出された。しばらくテニスを離れていて、急にテニスをやれと言われると体がキツイ。ボクのラケットは息子と一緒だが、息子は軽いバージョンだ。試合用に2本必要だから、なるべく重量を同一にしてあげたい。都内と郊外のテニスショップを巡り、重量を図り同一の重さのラケットを用意してやった。すごく苦労して探したのに「新モデルのラケットを変えたい」と軽々しく言い放たれた時は悲しくなった。パートナーであるラケットをころころ変えようとする、実績が伴ってないのに。その心に貧しさを感じる。次から次に新しい物を欲しがる。あぁこれは過去の自分だ。飽きたら次のクルマ、それも飽きたら次。車検なんて通したこともない。限定モノにほいほい大金を払う。物質に心の豊かさは宿らないと知らなかった時の自分だ。まったく反吐が出る。もっと厳しく育てようと思った。1時間打ち合って、ようやく球筋が戻ってきたが、ボールを返すのに四苦八苦しているボクに息子は不満げな顔だ。練習にならねえよ。そう言いたいのだろう。確かにプライベートコーチのおかげで息子の実力は上がったかもしれない。しかし良いコーチを探し、ボクの練習時間もすべて息子に捧げてきた。結果息子は繁栄し、ボクは衰退、更に咎められるという現実だ。やれやれ、アンフェアな我が人生だぜ。いまの自分が誰のおかげでもなく、自分だけの成果だと、人は傲慢になった時に価値を失なっていく。先が知れてるな。虎のように、崖から突き落とすような何かが必要なんだろう。

夜は息子とエアガンに挑戦した。この一式は我が師、クランツレのメカニック氏から進呈されたものだ。この姿を見て、娘は「なんか24に出てくる人がいる!」と叫んだ。ドラマ24に出てくるSWAT部隊の事を言っているんだと思う。

ボクも息子と同じ頃、エアガンにハマっていた。裏山で友達と撃ち合うのがすごく楽しかった。規制もなくて、体中傷だらけで遊んだ。ボクはこの頃、土の匂いがしたのに、息子からは清潔なシャンプーの香りしかしない。時代ってやつか。

セットアップもぎこちない。でも楽しそうだ。

夢中で中にBB弾を詰める。

そして撃つ。的を狙って撃つのは楽しい。

撃ちまくる。ボクも撃ちまくった。隣のマンションのドアが一斉に開いた。迷惑ってやつだ。すみませんと頭を下げて今日一日が終わった。テニスも良い、エアガンも良い、何でもいい。何か好きになり、追求できる時間が子供には必要だ。娘はその時間をすべてスマホの電子コンテンツに奪われた気がする。だから息子にはスマホは可能な限り持たせたくないと思った。

帰りが遅いのをママに怒られ、久しぶりに息子とベッドに入った。YouTubeで光るBB弾を見て、次はこれを使って撃とうかって話をした。受験が終わったらエンジン式のラジコンをやろうかって話もした。いやどうせならドローンにいこうかって。崖から突き落とす教育ではなく、勉強を離れて、一緒に遊ぶ事が必要なんだとこの時気付いた。

アンフェアな人生”へ1件のコメント

  1. かくれぜんせーファン より:

    心が温かくなりました。私の息子も同じくらいの年頃ですがすぐに新しいものを欲しがりますし、親の心子知らずな感じで次々と関心が移ろいで行きます。変化のスピードがものすごく早くなったので仕方ないか、と思う反面、ぜんせ一さんが仰るように親子で遊ぶかのように熱中できるものに出会わせたいものです。

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