17歳の夏の日だったな、うん明確に覚えてる。先生にてめぇなんて辞めちまえって罵声を浴びせられたんだった。そのまま校門を飛び出したよ。校則を無視したボクは幾度となく先生に呼び出されたけど、そんなのも今日で最後だ。この支配からの卒業。ってやつな。 
 

それからなんとか人生を正規化してきたけれど、今でも学校ってヤツとは距離を感じるよ。なんせ最後の卒業式らしきものは中学で止まってるからな。やはりボクには縁がないんだろう。キャンパスライフとか、学生時代の青春ってやつと。 
 

しかしこんなことってあるのかぃ?オレが学生の前で講義を行うなんてことがだよ。一番信じられないのは他でもない自分なんだよね。 
 
ちゅうわけである学校からゲストとして招待頂き、講演に行ってきたぜんせーです!みなさんこんにちわ。先生とお呼び。 
 

学校に到着ぅ! 
 

ミート君も一緒だよ。何故って?ボクとミート君は人生が対極に位置するんだ。米国育ち、一流大学卒、米投資ファンドの世界で上り詰めた彼。まさに地ベタに生えるペンペン草と、太陽の光を一杯に浴びたひまわりのようさ。おかしいだろ、ペンペン草とひまわりがタッグを組むなんて。でもそういうハテナが学生には大事ってことさ。社会は謎に満ちている。そういうのを教えれる大人って以外と少ない。そう思わないかぃ。 
 

う、、うわぁぁぁぁぁ!が、学食ってやつなのかそうなのか?こ、このオレが、学食を食べれるなんて・・。大人にはガラクタでも子供にとっては宝物って時があるだろう。単なる学食だってボクにとっては手の届かぬ物さ。ロブションよりも、叙々苑よりも、かに道楽なんかよりも。ドラマ無き、金だけで買える無価値な体験、味。やれやれ。うんざりだ。見せてやるよ本当に価値のある料理ってもんをな。 
 
 

おらぁぁぁぁぁー!学生そばだから!しかもコレ激うまだから!ツユ少な目だからぁぁー!うむ。思い出すぜ。大学生最後の夏の試合。テニス部でエースだったオレはあと一歩でライバル校に敗れた。オレの青春は敗北と共に幕を閉じる。いいんだ、ほっといてくれ。オレは学食にふけた。生徒が帰ってがらんとしたキャンパス。一杯のそばを注文する。っふ。敗北者には孤独が似合ってる。でもな、後輩が一人、また一人。先輩かっこよかったです!って。やれやれ、敗北を噛み締める時間すら与えられないなんてな。なんてオレは罪な男なんだ。っていう妄想誰か止めて。 
 

きゃ、きゃぁぁぁぁぁー!きゃ、キャンパス・・大学キャンバス。キラキラキャンパスライフ。あぁ脳裏に蘇ってくる。あの頃オレは特殊相対性理論と量子力学の矛盾を完璧に証明する数式に挑んでいた。時代に一人の天才と呼ばれていたオレはその名声すらうっとおしかった。ただ神に近づきたい。それだけだったのに。春風が気持ち良いキャンパスはオレの唯一の居場所だった。誰もが嫉妬の目を向けるんだぜ。オレの頭脳にな。構内なんかにいたら歩くのすらままならない。ああ凡人に生まれなかった運命を呪ったさ。っていう妄想誰か止め・・いやそのままでいさせて。この時リアルなボクはホストクラブのトイレ掃除しかお仕事なかったんだから。 
 

広い構内に轟くV12の咆哮。授業中の教室の窓から何事かと生徒達がのぞき込む。警備員さんが怪訝な顔つきで守衛室から出てきた。やべぇシクった。これでオレも出禁だな。17歳のオレと今のオレ、愚かさだけはなんも変わっちゃいねえってことか。まぁいいさ、オレの事なんてどうでもよい。アヴェンタドールが未来ある若者たちの夢として刻まれたんだぜ?アヴェンタオーナーとして誇れることがこれ以上何があるってんでぃ。 
 

しかし意に反して先生の反応は良かった。「いいんです少しくらい。あんなに生き生きしている生徒達久しぶりに見ましたから。」ってな。あぁ、素晴らしい。アヴェンタとマクラーレンを見てはしゃぐ純粋な生徒達。そして生徒と向き合う先生たち。素晴らしい素晴らしすぎる。この学校を形成するすべての要素が美しく見えてきたよボク。なんてこった。学校ってこんなに良いところだったんだ。 
 

ボクは社会に出てから追いかけるように大検を取り、通信制の大学に入学した。それでいいと思ってたんだよね。オレの人生に先生なんて、学校なんていらねえってな。でも今後悔したよ。友達、先生なくして青春はねぇ。 
 

人生ってもんは・・もぅ戻れなぃ・・。時間の矢はエントロピー増大の法則により一方行にしか飛ばないってことよ。もしこの宇宙がマルチバース(並行宇宙)なら、どこかでキャンパスライフを送っている自分がいる。そのオレに言いたい。今を大事にしてくれ。 
 

もともとボクの講演は1コマの予定だったけれど、学校側の配慮で2コマ。実に180分という長い講義時間を頂くことができた。起業するまでの経緯、社会に出た時の考え方、お金の使い方、アメリカのツラさ。3時間にも及ぶ長い講義だった。本当はね、技術を教えたかったんだ。しかしそこまでの時間はない。それでもずーっと純粋な眼差しをボクに向けてくれたみんなに感謝したい。そしてこのブログも学生達が見てくれることになった。講演の翌日にはこのブログに生徒達からコメントを頂けたし、メールをくれた子もいる。あぁアグレッシブな君たちは本当に素晴らしい。中には起業を目指す子もいたんだ。学生から社会人へステップアップする君たちに技術を通して何かシームレスなビジネスを提供してあげたい。素直にそう思ったよ。あぁ足りない。もっとボクに時間をおくれ。しかし残念ながらボクはゲスト出演だ。継続性のある何かを提供することは困難かもしれない。でもきっと先生が学校側に交渉してくれると思うんだ。君たちが卒業する前にもう一度だけでも会える事を切に願うぜ。 
 

講義の最後、みんなボクにお礼を言ってくれたけど、実はお礼を言いたいのはボクのほうさ。クルマなんかよりボクの生き方に興味を持ってくれてありがとう。こんなに素晴らしいチャンスをくれた先生、ありがとうございました。