老害を語り出したら自分も老害の加害者だったかもしれない
つい先日、オフィスを移転した。またしても赤坂だ。
より広く、よりびゅーちふるなオフィスだ。床は奮発してヒノキ無垢材を全面に敷き詰めた。天井にはお洒落なスポットライトも散りばめた。
ベンチャー魂全開のぎゅうぎゅう詰めだった前オフィスに比べると大幅進歩だ。多目的スペースも用意した。よし、ここで研修とかセミナーをするぞ!と意気込んだが豪速で社員がPS4とプロジェクターをセットアップ。現在は贅沢なゲーセン状態になっておる。
移転後、いち部門から人員計画が発表となった。今期20名増員、来期は更に雇用を増大させて、100名規模まで持っていく予定だ。うむ。移転したオフィスにそこまでのキャパがないんだが。というわけで、移転した途端、次の移転計画を発表せざる得ないという状況に陥いり、この設備投資はなんだったんだろうと虚無感に支配された。
とにもかくにも引っ越したとなればやることがある。近隣への挨拶だ。ビルから近いところにある1軒屋がある。引退した老夫婦が住んでいるようだ。ビルオーナーがあそこだけは挨拶しておいたほうがいいと言う。何か不吉なものを感じた。
そして行ってみた。スキンヘッドのおじいちゃんだった。冒頭から大和魂とは何なのかということを叩きこまれた。そして近隣の路駐は絶対に許さないから覚悟しておけとも警告された。ただお前らは挨拶にきたから、大目に見てやってもよいと発言された。
そうか、この御方は神なのか。
極めつけ、世の中にITなんかがあるからダメになる。ITなんてなくなっちまえと力説しておった。
うむ。ボクはITなのだが。
まぁまぁムカっときたので意見したろかと思った。現在の経済の基盤はほとんどIT化されており、もはやITは空気と化している。誰もが知らずにその恩恵を受けながら生活をしているはずなのに。空気がなくなったらあんた死んでまうでぇと。
しかし途中、こういうのなんだっけなと考えた。あぁ、そうだ。こういうのを老害という。そうと知った時点でボクの頭はクリアになり、右から入ってきたものをそのまま左に受け流せるようになった。相手にするだけ無駄ってもんよ。
どうもこのエリアは老人達で結成される町内会が幅をきかせている模様だ。確かに年季の入った飲食店などが付近にたくさんある。イヤなとこに移転しちまったなぁ。
社に戻り、老害に合ってひどい目みたぜーと言いながら、そういえば老害について調べてみた。なるほど。今は30代から老害が始まってるらしい。そういえば、去年、新卒者4名に対して叱責したことがある。その翌日、全員辞めた。きっと彼らの目から見ればボクは老害だったんだろう。
自分のやってきたこと、マインドが絶対的に正しいと思い込み、目の前の人間を自分より下と決め付け、他者の意見は受け入れない。老害とはそういうものだ。確かにボクもそういうところがあった。若い者には若い者の視点がある。それを立場で捻じ曲げるのはとっても簡単なことだ。大事なのは耳を傾けて同じ視点に立ち、そこから彼らを導くような指導をしよう。
若さは希望。希望がなければ会社は繁栄しないからね。
老害に遭遇し、自身が老害そのものと知らしめられる。やっぱりお年寄りから得られるものは沢山あるんだね。大事にしよう。全社に、スキンヘッドのおじいちゃんと遭遇したらご挨拶するように徹底して、次なる移転計画に赤坂脱出を掲げておいた。