先日娘の学校で三者面談があった。先生から娘の成績を伝えられる。今娘の状況はすこぶる悪い。生活態度、成績、すべてが過去最高レベルで悪い。先生から伝えられた偏差値は聞いたこともないような数字だった。偏差値ってそんな低い数字あったっけ?って。

娘はスマホをフリーダムに使うようになり、更に部活を辞めてから崩れていった。学力は底辺をつけた。

スマホに設定したあらゆる規制を突破。顔は淀み、部屋にこもり、家族との会話が少なくなっていく。ギガ制限を食らって一件落着。と思ったら娘のフリーWifiキャッチセンサーが発動し、気づけばまたネットワークにつながっている。GPS追跡もキャンセル。Suicaの履歴を見ると毎日街で遊んでる様子。カネが尽きれば指紋認証金庫をマイナスドライバーでホジる。破れないと知った娘は、ママの一瞬のスキをついてカネをくすね、翌日には全部溶かす。生活指導を学校に依頼するも、娘は担任との交換日記で嘘を書き連ねていた。学校からは娘さんは良い方向に変わっていますという回答。ううむ、娘は学校までをも懐柔した。ハンニバル・レクター。

自分の欲望を叶えるために、勉強ではなく、大人を欺くことへ思考を全振りした中3港区女子。かなり手強い。眼の前で笑うこの子は本当に娘なのか、ただのネットワーク中毒者ではないのか。電波を求めてうごめく肉の塊にしか見えなくなってきた。

仕方ない。第三次スマホ戦争の勃発だ。早速スマホを取り上げた。これで友達ネットワークから遮断される。孤立するかもしれない。しかし泣こうがわめこうが取り上げる。取り上げると決めたら取り上げる。眼の前にいるのは中毒者。対峙する側が強い意識を持って接さなければならない。

それから数日間、娘は無口だった。帰ってくるのも遅い。連絡取れないのをいいことに、わざと心配をかけようとしているのだろう。やさしい声はかけてやる。しかしスマホだけは絶対に返さないと自分に誓った。

スマホを取り上げてある事に気付いた。メール着信、インスタメッセージ、LINE、あらゆる通知がONになっている。息つく暇もなく通知音が鳴る。こんな状態だと何にも集中することができない。スマホの規制はもっと根本的なところからやり直す必要性を感じた。

すべてのSNSアカウントを強制的にリセットし、スマホを初期化した。そこにKidsloxというより強力な有料アプリを導入した。appleのスクリーンタイムは穴が多すぎるからだ。躊躇する必要はない、これは中毒者との戦いだ。妥協したら負ける。それに蓄積したものを捨て去ることも時に必要だと教えたい思いもあった。

スマホを取り上げてから1週間もするとスマホ毒がだいぶ抜けた。会話も戻り、リビングにいることが多くなった。そこでドラマ 24を継続的にみんなで見ていこうという事にした。ジャックバウアーの誰かれ構わず巻き添えにしてく大惨劇を見せてやった。目論見通り、娘は24にハマった。24を見るために早く帰ってくるようになった。

娘にアイドル「推しの子」を見させられたりもした。なかなかおもしろくて、私がハマってしまった。

買ってやるものも増やした。スマホ中毒時はすべてのバランスが崩れてしまうが、毒が抜けてくると欲望と我慢のバランスをうまく取れるようなってくる。子育てに複雑なロジックは必要ないのかもしれない。過剰なら抑制する、ある程度は満たしてやる。甘えすぎたら厳しくする。そうやってシーソーのバランスを取ってやる。それだけでいいのかもしれない。

2週間も過ぎた頃、スマホ毒が抜けた娘はすっかり中学生らしい姿に戻った。また家族の時間が戻ってきた。

スマホを持っている時はブランド財布、バック、化粧品を欲しがるが、毒が抜けるとフツーのものを欲しがるようになった。部屋にLEDライトを貼りたいというから買ってやった。

こういうのならかわいいものだ。大人でも買えないブランド品と、チープなLEDライト。どちらの価値観が正しいのだろうかと自問自答する。正確な答えはないんだと思う。だから親の判断で決めていいんだと思う。

こうしてまた徐々に家族が元の姿に戻ってきている。今回のスマホ中毒症状は過去最高レベルでひどい。電子コンテンツの波にさらわれた娘に手綱を投げるのは、学校でも社会でもない、親がやらなければいけないのだと実感した。だから娘に恨まれても徹底的にやる。なんとかママとパパの手一本で波に飲まれた娘を掴んでいる。今そういう状況だ。まだ完全に脱していない。スマホを返すのはもう少し先になりそうだ。

やれやれ。親の心子知らず。スマホ戦争。続く。