ボクがちょうどネオクラベンツを降り、マセラティクアトロポルテに乗り換えて初めて知り合った友人がいる。7、8年の付き合いになるが、クルマ以外の趣味を共有するのはこれが初めてだ。

深夜の品川プリンスホテルのテニスコートを借りた。ボクは皇室一族の末裔だからやはりテニスをするときもプライベートコートとコーチをチャーターする。でも高すぎて鼻血出そうになった。

 

友人の彼は高貴なテニス一家。親、親戚は大会での華々しい成績を持つ。対してボクは雑草。中学時代に軟式テニスにハマり、せいぜい県大会出場。その後スポーツ全般から離れ、今こうして再度ラケットを持つことになった。

 

ボクはバックハンドが苦手で何度も明後日の方向にボールを飛ばした。しかし2時間のコーチングにより、なんとか相手のエリアに返せるまでに。フォアハンドでネットぎりぎりの鋭いタマを打ち返せた時の快感は病みつきになる。ジムで走っているよりよっぽどテニスのほうが体力づくりには向いているだろう。一心腐乱にボールを追いかけた。こんな感覚は久しぶりだ。死ぬほど汗をかき、もうヘトヘトだ。自分の体力のなさに幻滅した。

 

疲れ切った後、彼と焼き肉に行った。これほどまでに焼き肉が美味いと感じたことはない。おいしいものをよりおいしく。あぁスポーツは素晴らしい。

久しぶりに男同士でスポーツを楽しみ、そして語り合った。利害関係がなく、フラットに会話できる。そういう時間は素晴らしい。あぁそういえばボクに友人はいなかったんだな。

彼はよく”サラリーマンの限界”という言葉を使う。ベンツは買えるがアヴェンタは買えない。つまりそういうことか。なんだか卑下しているような印象も抱くが、実際彼は巨大企業の出世コースをひた走り、多くの部下を抱える。彼は人生を謳歌しているように見えるし、なにより人望に厚い。観光地に別荘を持ち、アウディR8と現代のAMGを借入ナシで彼は購入する。自分なりの哲学を持ち、セルフマネージメント力に長け、そしてネガティブを言わない。

対してボクはどうだ。カネの管理はできないし、時間にルーズ、人の支援がなきゃ生きられない。例えネガティブだろうが思った事をぽんぽん口にする。アヴェンタドールなど所詮会社からの借りものさ。自分で得たものはそうな、アルファードに少し贅沢してケーニッヒベンツくらいなものか。やれやれ。

起業家とサラリーマン。どちらが良いかなんて存在しない。見方を変えればボクは社会のルールに沿えなかった外れ者。残された道は起業しかなかった。ただそれだけのことだ。

彼はボクをスゴイと言ってくれるが、ボクは彼の足元にも及ばないとすら思う。クルマを通じて知り合った人が、長い年月を経て、同じボールを打ち合う仲になり、立場を超えてお互いを尊重し合えるなら、ボクのカーライフ、意味があったものだと。そう思えた今日でした。次のレッスンはまた来週ぅ。